王国の北部に位置するラスニール山中腹が、決戦の舞台だった。
様々な乗り物を持った選手達と、観客が高山に集結している。
斜面に設置された3つのバンクは背中から突き出たコブのようだ。
最後のバンクを、選手が飛び越えていく。
「高い……!」
どよめきが起こる。起こしたのは、コナンだ。
ラフォーレの魔法で高く飛んだコナン、順手でスケボーの後ろを掴みながら、前方向に回転する。
1回転、2回転、3回転……5回転して、片膝をつきながら着地してみせた。
湧き上がる歓声。片手を上げて応えるコナン。
「相変わらず、コナンは順調だね。」
「ああ、急造コンビで1800とは……」
呟く男達は、同じ姿形をしていた。違うのは長い前髪が隠す目だけである。
「……誰だ、アイツら?」
コソコソとジェットに訊ねるアンネ。
「ああ、あいつらは三つ子のバンディット兄弟だ。優勝候補ってヤツだな」
「ふうん、そうなのか……」
「ま、候補ですから、私達のコンビにはかないませんけどね」
ラフォーレによく似た物言い。だが、ラフォーレはまだコナンの試技をしているはずだった。
アンネは振り返る。
そこには水色の緩やかにカーブした髪を指先でいじる美少女がいた。
ドレス姿からくる気品溢れる美しさと、悲哀溢れるぺったんこな胸が印象的だ。
「……………」
その後ろには、素肌をむき出しにしたつるっ禿の大男がいた。
「わたくしはセイカ。後ろは従者のセンドよ」
「ラフォーレと同じく、氷や水の魔法を得意とするセイカお嬢様。んで、後ろが魔法を使わないストレートってプレイスタイルで有名なバディのセンド」
面倒くさそうに投げやりな紹介をするジェット。
「相変わらずジェットは男前ね。わたくしの従者にして差し上げてもよろしくてよ?」
「毎度ありがたい申し出だが、センドに殺されそうだ、謹んでお断りさせていただくぜ」
センドの眼光から逃れるように視線を逸らし、肩をすくめるジェット。
「ジェット、この人達は?」
「バンディット兄弟やコナン先輩と同じ、優勝候補だよ」
「ふぅん」
アンネは着込んだジャージのエリを立てながら呟く。
「優勝候補って一杯いるんだな」
「っ!! あなた、わたくしをナメてますわね? わたくしは胸以外はあなたにも負けませんわよ!」
「いや、なんで胸になるんだ。私だってないし……」
自信のない体の話になり、恥ずかしそうにそっぽを向くアンネ。
「セイカお嬢様は幼児体型なのを気にしておられるのだ。こう見えて、俺と同い年でいらっしゃる」
「ジェット、わたくしを子供扱いしないでくださいませ!」
ジタバタ暴れるセイカの頭にポンと手を置くジェット。その身長差、およそ30センチ。
まるで大人と子供だった。
「は、はは。随分なつかれているな、ジェットは」
笑いながら、アンネはどこか胸の奥がチクチクするように感じていた。
ただ、癪に障った。それがなんなのかは、よくわからずに。
「むきーっ! ジェット、そこの女は一体なんなのよ!」
「そこの女? ああ、アンネのことか……アンネは今回、俺とバディを組むんだが」
「アンネって言うのね?! ラフォーレもいけすけなかったけど、こいつも相当ね!!」
「お嬢様……そろそろ私達の番です」
それまで黙っていたセンドに促され、渋々去っていくセイカ。
「ジェットは知り合いが多いんだな」
「いや、コナン先輩が強いからな。その煽りで俺まで知り合いが増えたんだ」
楽しい仲間達だよ、と笑うジェットの顔はどうみても本音で。
アンネは余計にムカムカするのだった。
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