学園の中央、シンボルにもなっている時計台から鳴らされるベルの音。
 それは授業終了の合図だった。担任は教本を閉じ、授業の終了を告げる。
「――それでは、今日の授業はこれで終わりです。各自、復習を怠らないように」
「きりーつ、礼!」
 席を立ち、礼をする生徒達。教師がつかつかと教室から消えた途端に、張り詰めていた空気が緩んだ。
「ねーねー、4丁目のパン屋の新作パン、美味しいらしいよ」
「マジで? ちょっといってみっかー」
 教科書をカバンに詰め、思い思いに教室を去っていく生徒達。窓の向こう、茜色に染まった空に大きな夕焼けがぽっかり浮かんでいた。
 コナンが黒板の内容をノートに書き写していると、不意にノートへ落ちる影。
「お、今日もやってるね。今度ノート写させてね!」
 赤い洗濯バサミに挟まれた、オレンジ色のツーテールが揺れる。既に帰り支度を整えたピリカだった。
「別に良いけどさ、もうちょっとピリカは自分で勉強した方が……」
「っと、そうじゃなかった。ほら、昨日の件! 作戦会議しましょ!」
 ピリカはコナンのお小言をかわすように、話の矛先を変える。
 コナンは釈然としないものを感じつつ、筆記用具を筆箱へと詰め込んだ。
「それだけど、今日はちょっと無理なんだ。ごめん」
「……昨日の今日なのに、約束守ってくれないの?」
 ピリカの顔が暗く、明らかに不機嫌になっていくのがわかる。眉を寄せ、本当に申し訳なさそうにしながらコナンは頭を下げた。
「うん、どうしても外せない用があって。その作戦にも関係がある事なんだけど」
「作戦にも関係がある……?」
 鸚鵡返しに訊ねるピリカだが、コナンは明言を避ける。
「そうなんだよ、まだ今は話せないんだけど……」
 分厚い辞書やらが入った学生カバンに筆箱やノートをしまい込み、席を立つコナン。
「それじゃバイバイ、また明日ね!」
 そのままピリカを振り切るように、小走りで教室から消えていった。
「??」
 常とは違うコナンの態度に、ピリカや遠目に観察していたアンジェリカは首を捻るのだった。
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